次の扉へ

南アフリカ研修を終え、その後サブサハラのアフリカ諸国を廻って、無事帰国した。このアフリカ研修は、いろんな方々の協力があって実現したものだ。その恩返しも含め、このアフリカの経験を直接お話ししたい思いで、帰国してからいくつかの病院や大学で、講…

シエラレオネの小児外科医

シエラレオネ人の友人に紹介されたのが、国で唯一の小児外科医だった。朝8時30分に病院に来てくれと言う。首都で一番大きい公立病院。ホテルからの距離は20kmで、普通に行けば30分くらいで着く。でも朝の渋滞があるから早めに出た方がいいんじゃないの? 「…

アフリカ最貧国

平均寿命46歳、アフリカで最も貧しい国の一つ。いろんな肩書きを持つシエラレオネ、実は行きたい国リストに入っていた。 ケープタウンの病院食堂で声をかけられたのが、シエラレオネ人の小児神経内科医だった。気さくないいやつで、すぐに仲良くなった。でも…

ガーナの洗礼 第2章

外来の日は、午前中に山のように患者がやってくる。二つの部屋に医者が5人くらいで外来患者を診ていく。ひとつのテーブルの周りに椅子がいくつか並べられていて、患者が次々と医者の前に座らされる。 看護師に呼ばれて椅子に座ると、目の前になぜかアジア人…

ルワンダの小児外科医

タンザニアに住む友人から、求人募集が来た。 「アフリカ職が見つかったよ!ルワンダは外科医が足りないみたいだよ!」 ルワンダ?!虐殺の歴史しか思い当たらないけど、ネットで調べると、アフリカでも有数の安全な国らしい。この機会を逃したら次に行くチ…

アフリカンな病院

西アフリカの一国の、しかも首都から離れたところまで来ると、さすがに西洋人の姿をほとんど見かけない。患者も医者も看護師も、全員黒人だ。 教育病院だけに、病棟にも、オペ室にも、医学生がウジャウジャいる。聞けば、大学病院はガーナに7つあって、うち…

ガーナの洗礼

南アフリカでの研修が終わったのに、日本に帰りたがらないトオル。ぶらりサブサハラの旅の最終地、西アフリカのガーナに到着した。 「ガーナと中国の関係が悪いから、中国人と間違われないように気をつけてよ」 いろんな人からそんな風に言われる。でもそり…

マラウィの小児外科医

マラウィには小児外科医が一人しかいない。 そんな噂はずいぶん前に聞いていた。どんな人がやっているのか。どっかのタイミングで見に行きたい。日本からはとてつもなく遠いが、飛行機1本で行ける南アフリカにいるうちに行きたい。そんな思いが、南アの研修…

汚れていい子なんていない

生まれつきの病気の一つに、肛門がうまくできていない病気がある。腸があるべき肛門の場所から出ないで、本来の穴から前寄りに出ていたり、全然肛門に開孔していなくて、尿管や膣につながっている病気だ。これら直腸肛門奇形は、うちら小児外科の専門分野だ…

クジラに出会える町

日本が夏を終える頃、ケープタウンには春が訪れる。冬と言っても雪が降るほど寒いわけではないが、人々の活動レベルはぐっと下がる。そんな冬の終わりの一大イベントが、クジラの到来だ。 Hermanusという、クジラと出会えることで有名な町が、ケープタウンか…

2週連続の肝腎移植?!

だいたい夕方4時頃になると、みんなそろそろ帰るかなという雰囲気になる。特に金曜午後の、もう話しかけてくれるなオーラはものすごい。外科チームも例外ではない。来週の手術予定の患者をおさらいする術前カンファが終わると、「ではよい週末を!」と言って…

肝と腎の移植

「明日、移植入ったから!できる手術は今夜のうちにやっておこう」 通常は夜中0時を過ぎたら、よっぽど緊急じゃない限り手術はしないことにしている。夜は人が少なかったり、医療者の集中力が落ちたりして、安全性が保たれにくいからだ。 でも今日だけは違う…

膀胱損傷2連発!

日本で小児外傷に携わった頃、小児科の偉い先生に言われたことがある。「子どもの外傷はね、だいたい通学の時間帯に起こるから、夜中に起こされることはないよ」たしかに夜中のバイク事故とかないもんなあ。子どもを専門に選んでよかったー。当直の日の夜23…

体重1kgの赤ちゃんの手術

いくら外科医といっても、自分の専門外の領域は手を出しにくい。骨は整形外科医にまかせたいし、脳はやっぱり脳外科医に、もちろん心臓は心臓外科医にお願いしたい。そしてどんな外科医でも、未熟児や新生児はできたら扱いたくはない。そう、そんな小さい赤…

パターン化

また腹痛患者が来た。小児患者で腹痛の訴えは多い。その中で、外科的処置が必要な疾患は限られる。腹痛といえば・・・こんなパターン化した考えが、大きな落とし穴になり得る。 12歳男児。右陰嚢痛、いわゆるタマ袋の痛みを主訴に来院した。診察すると明らか…

イエスマン

ヨーロッパ小児外科学会に参加すべく、キプロスという国にやって来た。直前に寄ってきたドイツからキプロスまで3時間半。近くていいのだが、到着時間が夜中の2時半と変な時間。ホテルには4時頃到着した。朝4時のウェルカムドリンク。でもケチって部屋は今日…

ドイツのオーケストラ

小学校の頃のあだ名なんて、たいていたいしたネーミングじゃない。バイオリンを習っているというだけでキザ呼ばわりされている男がいた。その彼に会うために、ドイツにやって来た。 以前、応募したヨーロッパ小児外科学会になんとか採用されて(「キプロスへ…

胸腹部外傷2連発!

「10歳の子がバスにひかれたって!早く来て!!」 救急に急いでかけつけた。なにやら重傷っぽいのが二人もいる。 「こっちは頭部外傷だけだから。あなたはそっち診て!」 今日の救急はざわついている。10歳の男の子、スクールバスに乗り上げられたようだ。搬…

看護師寮に引っ越しました

当直の日の夜。ようやく22時頃、臨時手術も終えて、例のレトロなミニに乗って帰宅した。さーてシャワーでも浴びるかと思ったら電話が鳴った。 「鼠径ヘルニアの嵌頓が治せないんだけど来てもらえる?」 再びスクラブに着替えて、かかりにくいエンジンをやっ…

乗り合いタクシー

金曜の夜、なぜか男3人で街中のレストランに入った。南ア人(黒人)、カナダ人(白人)、日本人(黄色人)というナゾの3人組。半分バーみたいな感じで、クラフトビール飲みながらでっかいハンバーガーを食べられる、お気に入りの店だ。 最近カノジョと別れた…

虫垂炎と思いきや・・・

夜中の2時、電話が鳴った。 「トオル!腹痛の子が来てるんだけど、アッペ(虫垂炎)だと思う!」 当直は卒後3年目の若手医師と一緒に行う。非常に優秀で勤勉な人らばかりでとても助かっている。でも外科的診断に関しては、やはり自分で診ないと心配なので、…

お腹の赤ちゃんの手術

こどもたちの中には、産まれるときからすでに病気を持っている赤ちゃんがいる。いわゆる先天性疾患だ。それらの病気のいくつかは、産まれる前、お母さんのお腹の中にいる状態で治療が可能になってきている。胎児治療というものだ。 その最先端を行っているの…

医学生への教育

See one, Do one, Teach one.なんていう格言が、医療の世界にはある。なにかモノを学ぶときには、まず見てどんなものかを知って、自分でやってみて確かめて、そして他人に教えて理解を深める。海外で医療をやっていると、最後の「Teach one」の比重が、日本…

ヤケド病棟

「トオル!熱傷病棟に行ってきて!人が足りないんだよ!!」 教授に言われたら行かざるを得ない。熱傷?ヤケド? 「おれに惚れたらヤケドするぜ」 などと言う機会がないくらい、日本男児の国外でのパフォーマンスは落ちるが、それはともかく、ここケープタウ…

おチンチンの話

小児外科医をやっていると、患者の陰部を診る機会がものすごく多い。でも子どもが相手なので、特に抵抗はない。 男児の陰部・鼠径部の病気は、小児外科の専門領域だ。外来をやっていてお母さんの訴えで最も多いもののひとつに、この皮を切ってくれ、というも…

新聞の一面

医療の世界では、異動や転勤で病院を立ち去る医者に、皮肉半分で送る言葉がある。 「今度、顔を見るとき、新聞の一面で見るってことないようにね」 それぐらい、医療ミスや医療事故は起こる可能性があるし、マスメディアの関心はとても高い。たしかに医療事…

エキノコッカス

日本であまり見ないけど南アフリカでよくある病気シリーズ。 「エキノコッカスと言えば北海道のキツネ」医師国家試験で呪文のように覚えるキーワードのひとつだ。動物を媒介として人間に感染する寄生虫で、肝臓に悪さすることが多い。 6歳女児。肝臓にでっか…

ハイキング

週末の過ごし方は、それぞれの国でいろんな過ごし方があって面白い。ここケープタウンの人がよくやっているのが、目の前にあるテーブルマウンテンに登ること。職場の同僚に誘われて行ってきた。 特に夏はハイキング人口が多い。登りやすいコースは、登山道で…

M and M

「トオル、来月 M and M よろしくね」 マジ?なんかまわってくる頻度増してるんすけど・・・ 別にチョコレートの話をしているわけではない。Mortality and Morbidityって言って、その月に亡くなった患者や治療過程に問題があった患者を取り上げて、みんなで…

キプロスへの道

医者には患者の治療以外にも、大事な仕事がある。それは「学会発表」とか「論文作成」とかいうものだ。 世界中のいろんなところで学会は開催される。去年はナイジェリアでのアフリカ小児外科学会に参加したし、せっかくなら日本からはあまり行けないところに…