ガーナの洗礼

南アフリカでの研修が終わったのに、日本に帰りたがらないトオル。
ぶらりサブサハラの旅の最終地、西アフリカのガーナに到着した。

「ガーナと中国の関係が悪いから、中国人と間違われないように気をつけてよ」

いろんな人からそんな風に言われる。
でもそりゃ無茶だ。
うちらがアフリカのどの国出身の人か見分けがつかないのと同じで、
ガーナ人がアジア人を見て、どれが中国人か韓国人か日本人かなんてわかるわけがない。
そもそも日本が中国の一部と思っている人だって少なくない。

「ハロー、ぼく、トオルです。日本から来ました。
ジャパンね、ニッポン。そこんとこよろしく」

辺り構わず初対面からアピールするしかない。

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首都アクラからちっちゃな国内線に乗って40分、目的のクマシに到着した。
ケープタウンで仲良しだった同僚のガーナ人に紹介してもらって、
短期間の病院実習ができることになった。
友人の古いベンツに乗って病院に向かう。
道の両脇は喧噪、雑踏。やはりここもリアルアフリカだ。

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街一番の大きな病院に着いた。
ここは医学部傘下の教育病院で、医学生がやたら多い。
その学生たちの寮に住まわせてもらうことになった。

恐る恐る部屋のドアを開けると、意外と広い。
トイレ・シャワーもあるし、キッチンだってある。
いいじゃんいいじゃん。

まさかとは思うが、一応確認してみる。
えーっと、シャワーからお湯は出るよね?

「は?なに言ってんの?もちろん水だよ。
ガーナは暑いからダイジョーブ。
冷たいの浴びると気合いが入っていいよ」

まあ確かに赤道直下だし暑いけど、シャワーはお湯がいいな・・・

友人と買い出しを終え、帰宅してさっそく水シャワーに入ってみた。
夜になって涼しくなる前に入っておきたい。
・・・
こういうの、20歳代のときにはけっこうありました。
でも、もういいっす。
気合いが入る前に、気が滅入る。

翌日、周りの学生に聞いてみた。
みんな水シャワーなの?

「トオルはケトル持ってないの?お湯わかして、水に薄めて使ったらいいよ」

そういえばケトルは初日に購入していた。
もともと冷たい飲物を摂取するとすぐ腹を壊す体質なので、ケトルは手放せない。
もちろん買ったのはティファールとかブランド物ではなく、
店頭の前面に並ぶ安いタイプのものだ。

こういうのは決まってメイドインチャイナ。
貧しいアフリカで、価格の抑えられた中国製製品の市場はデカい。

水を入れる部分の底の方には鉄の棒がむき出しになっている。
でもそんなのは気にならない。
さっそくわかしてシャワー室のバケツに入れた。
水を加えて、身体にかけてみる。

極楽。

ケトルのおかげで、完全にガーナの洗礼を克服した。
ありがとう中国、マイフレンド。