ルワンダの小児外科医
タンザニアに住む友人から、求人募集が来た。
「アフリカ職が見つかったよ!ルワンダは外科医が足りないみたいだよ!」
ルワンダ?!虐殺の歴史しか思い当たらないけど、
ネットで調べると、アフリカでも有数の安全な国らしい。
この機会を逃したら次に行くチャンスはそうそう訪れないだろう。
マラウィから南アに帰る前に、立ち寄ってみることにした。
首都キガリの空港には夜に着いた。
まず驚いたのは、空港がきれいなこと。
そして街もきれいで、道路も舗装されていて、全く危険な感じがしない。
途上国に降り立てば、いつもうっとおしいくらいのタクシーの勧誘が
ちょっと恋しくなるぐらい、落ち着いている。
「千の丘の国」という別名があるとおり、ルワンダは丘ごとに街が形成されている。
そのため坂が多く、医療資源の流通が難しい。
そこで登場したのが、ドローンや小型飛行機を使った輸血の輸送だ。
こういう自由な発想は、規制の少ないアフリカならではだろう。
友人から紹介されたのは口腔外科医だったので、小児外科医にコンタクトを試みたが、
マラウィと同様、この国にも小児外科医は一人しかいないらしい。
その一人になんとかたどり着いて、病院に訪問することになった。
出てきたのは品のいい若い医師だった。
育ちの良さは少し話しただけでわかる。
この国で医者になるような人たちは、みんなケタ外れの金持ちなんだろうな。
でもこの人がこの国の小児外科を全部引き受けているのか?!
よく話を聞くと、この国では、そもそも外科医自体が少なく、
成人外科医が小児外科もやるために、
いわゆる小児外科医と看板を掲げているのは、
このDr. Ntagandaただ一人とのことだ。
その日の手術は鼡径ヘルニアなど小手術が4件。
一見、手術室はこざっぱりしている。
でも機械出しナースがいなくて自分で道具を取らなきゃいけなかったり、
いろいろ大変そうだ。
小腸閉鎖症の子が昨夜入院したが、手術は明日やると。
今日のリストに入れると、予定の小手術が終わらないからとのことだった。
手術の合間に小腸閉鎖症の子を病棟まで診に行った。
状態としては落ち着いているようだ。
輸液や抗生剤で経過観察されている。
でも血液検査とか十分でないし、本当にこの子を明日まで待っていいのか不安が残る。
虐殺の歴史を乗り越え、この安全な環境を作り出したルワンダは、
「アフリカの奇跡」と言われるほどの復興を遂げた。
でも医療の分野では、まだまだ不十分なところがあるようだ。
ルワンダではどの科の専門医も不足しているため、
いろんな病院を掛け持ちで見なければならない。
この小児外科医も、いくつかの病院で外来を持っている。
そのため、自分が手術できる日が限られているのだ。
就職先として紹介されたルワンダ。
会う人会う人が、「うちの国に来てくれ」と言ってくれる。
まだ研修中の自分の立場ではできることは少ないが、
アフリカで外科医が足りないことは、身をもって実感できた。