アフリカンな病院
西アフリカの一国の、しかも首都から離れたところまで来ると、
さすがに西洋人の姿をほとんど見かけない。
患者も医者も看護師も、全員黒人だ。
教育病院だけに、病棟にも、オペ室にも、医学生がウジャウジャいる。
聞けば、大学病院はガーナに7つあって、うちの大学には一学年200人いるらしい。
しかもポリクリと呼ばれる病院内での実習が3年間もある。
だから常に、指導医となる上級医の周りには、医学生の塊が群がっている。
新生児病棟に行くと、廊下に座ってるママたちの数と、
病室のベイビーの数に驚かされる。
あれ四つ子?
というわけではない。
ただ単にベッドが足りなくて、子供たちがぎゅうぎゅうに詰め込まれているのだ。
この中に食道閉鎖術後3日目とか、十二指腸閉鎖術後1日目とかの患児がいる。
名前が張ってあるわけではないし、
カルテもどこに置いてあるのかよくわらかないので、
患者把握がものすごく大変。
「1 baby 1 cot (赤ちゃん1人に1つのベッドを)」
という張り紙が貼られている。
2016年のキャンペーンみたいだが、
もう2017年も終わろうとしているけどね。。。
「トオル!生後6ヶ月の腸重積疑いの子がいるよ。オペ室に行こう!」
え?腸重積だったらまずは空気整復じゃないの?
「だから整復しに行くんだよ。オペ室ね!」
えーっ?
腸重積は、小さい子供がかかる病気で、腸が自分の腸に入り込んでしまうもの。
ほっといたら腸が壊死してしまう、一歩間違えたら怖い病気だ。
よっぽど最初から悪い状態でなければ、
通常は空気整復(施設によっては水)と言って、
お尻の穴から空気を送り込んで、はまり込んだ腸を元に戻す。
この整復は、レントゲン透視下で行うので、レントゲン室でやるのが常だ。
整復がうまくいかなかったときは、手術室に行って開腹手術をする。
でもここはアフリカンスタイル。
連続的に透視できるレントゲンの機械がないため、
手術室で全身麻酔下に整復する。
お尻の穴から空気を送り込むのは同じ。
じゃあどうやって整復されたか確認するのかというと、
子供の腹部所見で、触れていた重積部分の腫瘤が触れなくなったり、
腹部膨満が改善されることを観察する。
そして決定的なものとして、子供の鼻から胃管を入れて、
先端は胃に、もう一方の端は水につけておく。
お尻から空気を入れて、腸重積が解除されて空気が通ったら、
胃管から空気が出て、水に泡が見られるという方法だ。
相変わらず学生がたくさん来ている中、整復作業が始まった。
全身麻酔で子供が寝た後、お尻から空気が送り込まれた。
ブクブクブク・・・
「おー、泡が出てきた!」
はしゃぐ学生たち。
ホントにこれでいいのか?!
いろいろツッコミどころ満載だが、ここがアフリカの病院です。
でも、よくよく考えると、ここの医者たちは、
限られた設備で、自分の診察能力を頼りになんとかやっている。
なんとかやるしかない。
一方で、うちらがどれだけ画像とかに頼っているか。
頼りまくっている。