お腹の赤ちゃんの手術

こどもたちの中には、産まれるときからすでに病気を持っている赤ちゃんがいる。
いわゆる先天性疾患だ。
それらの病気のいくつかは、
産まれる前、お母さんのお腹の中にいる状態で治療が可能になってきている。
胎児治療というものだ。

その最先端を行っているのがアメリカ。
日本でもいくつかの病院が取り組んでいる。
南アフリカではまだ行われていないものの、
これからやっていきたいという意気込みがあり、
イタリアから講師陣を招いて、1日の胎児治療講習が行われた。

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この胎児治療、産婦人科が中心にやっている印象だが、
小児外科医が関わる疾患もある。

たとえば、
横隔膜に孔が開いていて、腸が肺に入り込んでしまっている先天性横隔膜ヘルニアや、
肺に嚢胞ができている先天性嚢胞状腺腫様形成異常(CCAM)、などなど。

その治療法がすごい。
まだ赤ちゃんがお腹にいるときに、
胎児鏡と呼ばれるカメラを母体のお腹から挿入し、
胎児の気管内にバルーンを膨らませるFETOというものがある。
また、分娩時に帝王切開して、顔だけ出ている状態で気管挿管したりする。

この胎児医療を確立するには、いろんな職種が関わり、いろんな準備が必要になる。
産婦人科、麻酔科、小児外科、などなど、各科の連携が重要だ。

ここケープタウンでできるのか?というと、まだまだ課題はありそうに思えた。
まず、胎児診断で必要な、エコーが全然普及していない。

日本だったら、妊娠したら定期的に妊婦検診があり、エコーで胎児の状態を確認する。
エコーの機械も立派だし、医師や技師の腕も優れているので、
胎児のときに見つかる先天性疾患が多い。
産まれる前に病気があることがわかっている子は、
NICUや小児外科が準備万端の状態で産まれてきたり、
または胎児治療を受けたりする。

でも南アフリカでは、妊婦検診自体を受けていない人が多い。
ましてやエコーなど行われていないので、
実際に産まれてから、
「あっ、この赤ちゃん、腸がおなかから出てる!」
などと言って、あわてて小児病院に運ばれる。

道のりはまだまだ遠いものの、ポテンシャルは高い。

地元の産婦人科医もたくさんこの勉強会に参加していた。
すぐとなりの産科病院から来た医師によると、
中規模病院で、一ヶ月の出生数が8,000人だって!
ものすごい数だ。
これだけ赤ちゃんがいれば、先天性疾患の数も多いだろうし、
胎児医療のメリットを享受する症例は確実にいる。
有意義な臨床データも集まるはずだ。

途上国と先進国の両方の顔を持つ南アフリカ。
その可能性は計り知れない。