M and M

「トオル、来月 M and M よろしくね」

マジ?なんかまわってくる頻度増してるんすけど・・・

別にチョコレートの話をしているわけではない。
Mortality and Morbidityって言って、
その月に亡くなった患者や治療過程に問題があった患者を取り上げて、
みんなで改善策など話し合う会議だ。

これは日本でもやっている。
だが日本では得てして、
その問題ある患者を受け持った医師がみんなの前で発表するため、
どうしても発表者本人が責められてしまう。

「なんでこの治療法を選んだの?」
「もっと早い時点で気がつかなかったの?」

これでは弾劾裁判だ。

「後医は名医」という言葉通り、
あとからみればなんとでも言える。
その時の担当医は必死でやっていて、その決断の連続での結果だ。

発表すればマシンガンのごとく打ち抜かれるのをわかっているので、
誰もM and Mでプレゼンなんてしたくないし、
このミーティング自体の意義がなくなってしまう。

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ここケープタウンの病院では、毎月1回、M and Mが行われる。
問題症例はファイル(もちろん手書き)に集められていて、
月ごとに決まった担当者が、全部の症例のプレゼンをする。
当事者だったり当事者じゃなかったりするので、直接責められることはない。
担当していた医師が参加していれば、その人にコメントを求める。
でも全体として、血祭りにあげるような雰囲気はない。
この症例の問題点はどこだったか、
次起きたらどのようなアクションプランが立てられるか。
非常に建設的だ。

今回特に取り上げたテーマは「虫垂炎」すなわち盲腸だ。
こっちの虫垂炎は病院に受診するのが遅いため、
病院に来た頃にはほとんど穿孔している。
そのため、術後もすんなり帰れるケースは少なく、
再手術で腹腔内を洗浄しに行くことがかなり多い。
これをなんとかできないか。
感染症専門医も呼んで、対応策をみんなで話し合い、とても有意義だった。

「プレゼンよかったよ」
褒められるのは単純に嬉しい。

それにしても自分の英語は理解してもらえたのだろうか?
若手ドクターを捕まえて聞いてみた。

「大丈夫よ。
ケープタウンは英語が母国語じゃない人がたくさんいて、
アクセントには慣れてるから」

そ、そっか・・・。

TEDのようにかっこよくプレゼンできる日を夢見てがんばろう。