英語の壁
「トオル、英語上手だね」
こう言われて嬉しいか?いや、逆だ。
「おまえの英語はまだまだだな」
と言われているのと同じ。
例えばケントデリカットとか、ウィッキーさんみたいに(古い?!)、
日本語で日本に馴染んでいる人たちに対して、
「日本語上手ですね」とはあまり言わないだろう。
医学英語はまだいい。
ふだんからやっている仕事を英語で話しているだけだし、
お互い大事な確認事項も多いから、
きっちり理解をしながら進んでいく。
でも困るのは、日常会話だ。
手術中、始まってしばらくは、
目の前の病気をどうやって治すかみんな必死でやっている。
問題は、山を越えて最後に閉創しているとき。
みんなホッとして、雑談をし始める。
雑談のなにが困るかって、話すトピックが予測できないことだ。
こないだどこに行って楽しかったとか、
昨夜のテレビは面白かったとか、
ものすごいスピードでネイティブ同士で話し始める。
こうなるともうお手上げ。
なにかこっちにフラれても、
「いま縫ってるから話しかけないで」とごまかすしかない。
幼児期から英語を話しているとかいう人でない限り、
アクセントがあるのは仕方がない。
現地人も、外国人がネイティブみたいに話すことは最初から期待していない。
英語を話す外国人は世の中にたくさんいるが、
インド人のアクセント、アラブ人のアクセント、
みんなそれぞれ強烈なアクセントがあっても、
がんがん話しまくっている。
重要なのは、英語という言語で話されている中で、
その会話の流れに乗っかれるかどうかだ。
英会話教室やスカイプレッスンなどの「英会話ビジネス」は、
日本や中国など、英語が苦手な国で、市場の大きな一部を占める。
ただ実際のところ、周りの会話が全て日本語の環境で、
週1回1時間だけ、英会話をやっても、
とうてい英語が身につくとは思えない。
じゃあどうやったらいいのか。
ズバリ「現地に行く」である。
語学学習で、これ以上もこれ以下もない。
最も効率的なのは、英語環境で一定期間生活することだ。
もちろん日本から出るのはいろんな障壁がある。
お金がかかるし、職場の都合もあるし・・・
でも、お金は貯めればいいことだし、
仕事に関しても、たいていの場合、
「自分がいないとまわらない」と思っているのは自分だけで、
自分がいなくてもなんとかなるものである。
ただ大事なのは、「飛ぶ鳥あとを濁さない」こと。
周りの人たちに「がんばって行ってこいよ」と
気持ちよく送り出してもらえる環境整備は重要だ。
たまに、自分のキャリアを中断して、
海外の語学学校に留学する人がいるが、
英語を学ぶためだけに時間を費やすのはもったいない。
その質はともかく、自分の仕事と関わる形で海外に行って、
働きながら英語を勉強するというのが効率的だ。
人生そんなに暇じゃない。
外国に行っていいスタートを切るという意味で、
日本での英語の勉強はいいかもしれない。
ただあくまで、その先に海外生活があった方が、
いいモチベーションになる。
もちろん、外国に住んだだけで英語がうまくなるわけじゃない。
「英語を勉強する」という行為が必要になる。
ここで外国に住んでいていいのが、
勉強した単語や言い回しを、すぐに試せることだ。
今日は今まで使ったことのないあのフレーズを使ってみよう、
過去分詞を会話に入れてみよう。
そうやって会話の幅が広がっていくのがおもしろい。
「英語上手だね」と言われなくなったとき、
英語の壁を越えたと言える気がする。