飲んだらマズいもの
モノを飲んじゃったシリーズ第2弾。
小さな子どもはほんとにすぐモノを口に入れてしまう。
以前書いたとおり、コインは食道を通ってしまいさえすればほぼ問題ない。
ただ、飲んでしまったらかなりマズいものがある。
それは、マグネットだ。
その日の当直はかなり忙しかった。
コイン誤飲が2件も来た。
臨時手術が終わったのが22時、
そのあと敗血症の赤ちゃんの点滴が入らないと呼ばれたのが23時、
骨髄針まで使ってようやくうとうとしてたら、
夜中3時に電話が鳴った。
「2歳の男の子、マグネットを何個か飲んで、吐いてるんです」
眠気が吹っ飛んだ。
一気に臨戦モード突入。
この電話には、危険なキーワードがいくつかある。
マグネットは、ひとつだけ飲んだのならば、そんなに怖くない。
コインと同様、食道さえ通過すれば、あとはうんちと一緒に流れるのを待つだけ。
問題になるのは複数のとき。
マグネット同士が引き寄せ合って、その拍子に腸管を傷つけてしまう。
そして吐いているということは、なにかおかしなことが起きている証拠だ。
レントゲンを見ると、たしかにマグネットが2つ入っている。
よく見ると、腸管も拡張していて、ダメージがでてきてるっぽい。
飲んじゃったのはこんなマグネットだ。
複数のマグネット、嘔吐の症状、レントゲン所見。
男の子は意外とひょうひょうとしていたが、
これらの条件が揃えば緊急手術間違いなし。
その日のうちに開腹手術を行った。
おなかを開けてみると、すでに腸にいくつも孔が開いていた。
仕方ないが、切るしかない。
孔がいくつも開いている部分の結腸と小腸を、
それぞれ5cm程度ずつ切除して吻合した。
でも小さいマグネットがまだ胃にもある。
十二指腸も傷ついている可能性がある。
「トオル!内視鏡で見てみて!」
口からカメラを入れた。
十二指腸は大丈夫そう。
結局、胃も開けてマグネットを取り出した。
幸い術後の回復はよく、手術して4日で元気に退院した。
それにしてもマグネットを飲んだだけで、
おなかを開けて腸や胃を切られてしまうなんて。
同じ誤飲でも、モノが違うとこんなにダメージが変わる。
くれぐれも子どもの近くには小さなモノを置かないように!!