仕事をする喜び
病院に向かう足取りも軽い。
医師登録が終わり、ようやく一人前に仕事ができるようになったからだ。
当番表を決めるシニアレジデント(上の方の研修医)には、
じゃんじゃん仕事入れてね、と言っておいた。
「じゃあ軽いのから始めよっか」
といきなり日帰り手術をやらせてくれた。
この日は陰嚢水腫1件、包茎手術2件。
いずれも小児外科医としては基礎的な手術。
でもやらせてもらえるのは嬉しい。
3件無事終わらせると、
助手として入ってくれたシニアレジデントは、
特に感想もなく帰って行った。
その日の午後、自分が加わった改訂版の当番表に、
次の日帰り手術の術者として自分の名前が入っていた。
オッケーだったんだな、一応。ほっ。
午後は外来。
今までは見学だけだったが、
ようやくひとりで患者を診られる。
「風船ちょうだい!」
入ってくるなり、いきなりお願いしてくる男の子がいた。
風船?!
最初はよくわからなかったが、他のドクターがやっているのを見たことがある。
手袋を膨らませて、それに顔を描いてあげる。
マジックで描いてるところから、キャッキャと嬉しそうに笑っている。
この子、けっこうおっきいよな。
日本でこの年齢の子にこんなことしても、喜ばれないんだろうなー。
もっと楽しいオモチャがたくさんあるからなー。
外来が終わるやいなや、他科の病棟からコンサルトを受けてくれと頼まれた。
「すぐ行くよ」
仕事するってすげー楽しい。
久しぶりに外科医としての自分を感じられた。