患者が運ばれてこない!
昼の12時頃、他の病院から紹介の電話が来た。
「生まれたばかりの男の子、腹壁破裂で生まれてきた!」
腹壁破裂、名前の通り病態も激しい。
ヘソの緒の横側の腹壁が弱くなっていて、
腸が体の外に飛び出した状態で生まれてくる病気だ。
日本では、妊婦検診でのエコーが進んでいるので、
だいたい妊娠中に診断される。
産まれる直前には
NICUや小児外科医が準備万端な状態にして、
初めて産まれてくる。
でも南アフリカでは、まだ地域によってはエコーで診断ができず、
出産時に出てきた子供を見て、「腸が出てる!」と初めて気づく。
「あと30分でそっちの病院に着きます。でも腸はどうすればいいの?」
たしかに経験がなければ、出てきた腸の処置には困るだろう。
サイロと呼ばれるビニールバッグをつけるのだが、
そんな特別なものはどこの病院にもあるわけではない。
応急処置をして、とにかくすぐに運ぶよう伝えた。
だが、待てど暮らせど到着しない。
結局来たのは18時!
病院に着いてNICUに連れて行き、急いでサイロを巻いた。
腸管のダメージが進んでないことを願う。
同じ日の14時頃、近くの病院から、
ヒルシュスプルング病疑いの生後2日の紹介が来た。
メールで送られてきたレントゲンを見る限り、
腸管が拡張していて、早めにガス抜きと腸洗浄が必要だ。
でもこれも19時になっても来ない・・・
「来ないならこっちから行くしかないよ」
一緒に当直してた医師と共にクルマに乗った。
5分と経たないうちに、その病院に到着した。近っ
なんでこんな距離で搬送に何時間もかかるの?
「救急車がようやく来たんだけど、今度は赤ちゃんを運ぶ保育器がないのよ」
救急車は立派なのになー
向こうの病院に着いて腸洗浄しようとしたら、
カテーテルやシリンジがないって!
準備するのにそこでも待ちぼうけ。
この国で医療をする限り、
忍耐力がとっても重要だ。
でもなにより、被害を被るのは、
結局は子供たちなんだよな・・・