喜望峰

「喜望峰に行こうよ」

同僚が誘ってくれた。
遠い昔に世界史の授業で習った場所。
バスコダガマ?だよね?
センター試験を受けたときは、もっと詳しかったのになぁ。

西アフリカのガーナから研修に来てる医師も一緒に行くことになった。
クルマの中では、もっぱら南アフリカの歴史についての話になる。
ガーナ人にとって、同じ黒人がどんな時代を歩んできたのか、気になるようだ。

「アパルトヘイトのときはどんな感じだったの?」

黒人で南ア人の同僚が、運転しながら答えてくれた。

アパルトヘイト時代は、黒人はまともに教育を受けられなかった。
医者になるにも、ナイジェリアやエジプトなど、
他の国で医学部を出なきゃならなかった。

「ひとり知り合いで、外国で形成外科の専門医を取って、南アに帰ってきたけど、
黒人に手術はさせない、と言われ、ずっと町医者のまま死んでった人がいるよ」

1980年代になり、ようやく黒人も高等教育を受けられるようになった。
アパルトヘイトが終わり、ネルソン・マンデラが大統領になったのが1994年。
まだ20年ちょっとしか経っていない。
同僚の彼みたいな人が、黒人として外科医になり、
これからの南アフリカの新しい歴史を作っていくのだろう。

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KAAP DIE GOEIE HOOPってのが、
アフリカーンスっていう現地語で、
Cape of Good Hope=喜望峰って言う意味。

ポルトガルから旅立った
バルトロメウ・ディアス(世界史やってた人には懐かしい?!)が初めて発見し、
その数年後にヴァスコ・ダ・ガマがここを通ってインドまでの航海路を築いた。
地球の反対側にある、大学受験で必死に覚えた名前の地に、
まさか自分が実際に来るとは思わなかった。

ちょっと感傷に浸っているところに、同僚が言った。

「ここが、植民地の歴史の始まりだよ」

たしかにね。
大航海時代って、航海してる方の立場からしか見てなかったもんな。

今日、彼らと一緒にここに来られてよかった。